今回の記事では、曲げ問題の最初に学習するであろうSFDとBMDの意味と描き方について解説したい。
下で説明する通り、『曲げ』はある事情から『引張・圧縮』や『ねじり』と比べて複雑な現象になる。学習する内容も多いのだが、まずはSFDとBMDの考え方を理解できないと始まらない。それぐらい重要だ。
複雑に考えてしまって苦手になってしまう人も多いと思うが、実は全然難しくない。
今回の記事で解説する内容をしっかりと理解して、曲げ問題の出鼻でつまずかないようにしよう!
そんなことより具体的な描き方を教えてくれよ!って人は下の記事を読んでほしい。徹底的に描き方を解説している。
材料力学 絶対描けるようになるSFD/BMDの描き方を徹底解説【材力Vol. 6-2】
また、SFD・BMDを描く上で絶対理解しておいた方がいい性質について知りたい人は、下の記事も合わせてよんでほしい。
材料力学 SFD・BMDの押さえておきたい大事な特徴と4つの特定パターン【材力Vol. 6-3】
いろんな問題の解き方のパターンを見たい人は下の記事をどうぞ。
材料力学 6つの具体例から学ぶSFD・BMDの重要ポイント【材力Vol. 6-4】
- 材料力学で大事なことは、どこに大きな応力が作用するか把握すること。
- 曲げ応力の大きさを決定するのは、その位置に働く曲げモーメントだ。
- SFD/BMDは曲げを受ける材料中の内力(せん断力・曲げモーメント)の変化を目で見てパッと分かるように可視化するためのモノ!
SFD/BMDは内力の変化を可視化するためのモノ!
そもそもSFDとかBMDって何のためのモノだろう?SFDはShear Force Diagram(せん断力線図)の略で、BMDはBending Moment Diagram(曲げモーメント線図)の略である。
言葉の通り、せん断力や曲げモーメントをグラフ上に描いたものである。グラフ上に描くことの最大のメリットは目で見てパッと全貌を把握できることである。
という訳で、まずは結論は以下の通り。
では、こいつらの変化をパッと把握できることで何が嬉しいんだろうか?
これを考えるために、一度材料力学って何のための学問なのか?という大袈裟な問いを考えよう。
材料力学とは、(少なくとも工学者にとっては)モノが壊れないようにコントロールするための学問だ。では、モノはどこから壊れるかというと、「弱い場所」もしくは「大きな負荷(つまり応力)がかかる場所」だ。
実際にはこれらを複合的に考えなければならないんだけど、ここでは材質については均質な材料を相手にしているとしよう。そうすると、材力の目的を成し遂げるためには、どこに大きな負荷が作用するか把握することが最重要事項になる。
典型的な曲げの問題である『片持ちばり』では、下図のような感じで、どこに最大の負荷が作用するかを考えることで「どこから壊れるか?(どこが危険部位なのか?)」「危険部位に作用する応力の大きさは?」ということを理解することにつながる訳だ。
さて他の記事でも説明しているが、応力を決定しているのはその場所に作用している内力だ。なので、材料中で応力がどう変化しているか?どこで最大になるか?みたいな事を把握するためには、内力の変化を知る必要がある。
ここで『曲げ』の特殊性、『引張・圧縮』や『ねじり』との違いが出てくる。
内力の変化を把握する!
『引張・圧縮』の場合、ある断面に作用する内力は下図のように考える事ができる。
これを見て分かる通り、重要なことは「材料中のどこの断面を見ても、そこに作用する内力(ここでは引張力)は同じ大きさである」ということだ。つまり、引張・圧縮の場合は内力の変化を把握もクソもないのだ(だってどこ見ても外力と同じ大きさの内力が働いてるんだから)。
この材料に生じる応力を決定しているのは内力である引張力なので、内力の引張力が変化しないということは、材料中のどこの場所でも同じ引張応力が働いているということになる。
これは『ねじり』の場合も同じことが言える。ねじりの場合は内力の種類がトルクになり、応力の種類がせん断応力になる。
『曲げ』の場合は何が違うのかというと、ずばり内力が場所によって変化してしまうのだ。下の図を見てほしい。
断面の位置によって生じる曲げモーメントが変化しているのが分かるだろう。材料をこのように曲げる場合、材料に発生する応力(曲げ応力と呼ぶ)の大きさを決めている内力は、このように位置に応じて変化する曲げモーメントになる。
上の絵を見ても分かるように、先端に荷重をかける場合、先端から遠ざかる(根本に近づく)ほどそこに発生する曲げモーメントが大きくなる。つまり、この片持ちばりの場合、根本に最大の曲げモーメントが作用し、同じく根本に最大の曲げ応力が作用することになる。
なので、このような構造では最も壊れる可能性のある危険部位は根本であり、ここに発生する応力を元に設計しないといけない。(普段の生活の中でも、こんな構造のときは根本から壊れそうなことがイメージできるでしょ?)
SFD/BMDの目的
このように『曲げ』のときは、応力を決める内力(つまり曲げモーメント)が場所によって変化していく(もちろん外力のかけ方次第では変化しないときもある)。
そのため、『引張・圧縮』や『ねじり』のときはなかったような、SFD/BMDという考え方を使って、内力の変化を把握するのが重要になる訳だ。
外力や支持条件を元にしてSFDとBMDを自在に描けるようになれば、どこにどんな大きさの応力が発生するか手にとるように分かる。曲げの問題を考えるときは常にここからスタートすることになるので、SFD/BMDの考え方をマスターすることはものすごく重要なのだ。
ここまでの説明で、「BMDが大事なのは分かったけど、SFD要らんくない?」と思った人もいるかもしれない。
曲げ応力を考えるだけなら、確かに曲げモーメントが分かればいいのでSFDは要らないかもしれない。ただ、このあとの記事で説明するように、SFDとBMDは無関係ではなく、ある大事な関係性を持っているので同時に考えた方が好都合なのだ。
また、このせん断力はせん断力で、何もしていない訳ではなく、実はその断面上にせん断応力を発生させている。
場合によってはこのせん断応力を重要視すべきときもあるかもしれないが、基本的に『はりの曲げ』を考えている限りは、せん断力によって発生するせん断応力よりも曲げモーメントによって発生する曲げ応力の方が圧倒的に大きいので、せん断応力を考える意味はそんなに大きくない(破壊が起きるとしたらせん断応力によってではなく、曲げ応力によって起こるということ)。
まとめ
SFDとBMDの意義について詳しく解説してきたけど、理解できただろうか。
次の記事では具体的な描き方と、絶対に押さえておくべき特徴について解説したい。ぜひ次の記事も合わせて読んでほしい。
材料力学 絶対描けるようになるSFD/BMDの描き方を徹底解説【材力Vol. 6-2】
材料力学 SFD・BMDの押さえておきたい大事な特徴と4つの特定パターン【材力Vol. 6-3】
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材料力学 6つの具体例から学ぶSFD・BMDの重要ポイント【材力Vol. 6-4】
- 材料力学で大事なことは、どこに大きな応力が作用するか把握すること。
- 曲げ応力の大きさを決定するのは、その位置に働く曲げモーメントだ。
- SFD/BMDは曲げを受ける材料中の内力(せん断力・曲げモーメント)の変化を目で見てパッと分かるように可視化するためのモノ!