さて今年の節分はいつも(ここ数十年は2月3日)と違い2月2日だった訳ですが、なんと節分が2月2日になるのは1897年以来124年振りということで大きな話題となりました。
突然ですが、ここで質問です。次に節分が2月2日になるのは何年後でしょうか?
「今年からは2月2日になるのか?」とか「2月2日になるのはまた100年後ぐらいかな?」みたいに思う人も多いかと思いますが…
大間違いです!!
これには天体の動きと暦の成り立ちが関係しています。
どういうメカニズムで節分は動くのか?季節と暦の関係性は?図を交えながら分かりやすく解説していきたいと思います。
(なお、この記事は国立天文台ホームページを参考に執筆しました。私は専門家ではありませんので、厳密には説明が間違っている(というか不適切な)箇所があるかもしれませんが、大筋では正しいと思います。その旨ご了承ください。)
- 次に節分が2月2日になるのが何年後か分からない
- 宇宙の壮大さにドキドキする!
- 節分がどうして動いたのかメカニズムが知りたい!
- ユリウス・カエサルって聞いたことあるけど誰だっけ?
Contents
『真の1年』と『暦の1年』のズレ
まず1年の長さってどれくらいだろうか?
そりゃ365日でしょ。そりゃそうだ。1月1日から12月31日までの365日で1年だよね。これは暦上間違いではありませんが、物理現象としては厳密には間違いです。
1年というのは天体の動き、つまり太陽の周りを地球が1周する時間で定義されます。地軸が太陽の方を向いている夏至(北半球が夏)から、反対向きの冬至(北半球が冬)を通ってまた夏至に戻ってくるまでが1年です。
この時間は365.24219日であり、ぴったり365日ではないのです。約6時間ほど365日よりも長い時間がかかります。
そうなると、少しずつ暦と実際の季節(天体の動きに基づく四季)がずれてきちゃう訳ですよ。どういうことかと言うと…↓
例えばこんな風に、春分になる時刻(地軸が太陽に対して垂直)が時間の経過に伴いどう変わっていくかを考えてみましょう。上の図で、りんご1つが1日です。図の下半分では、りんごが365個並んでいて、これで1年となります。上半分には地球の公転による真の1年の長さを青い矢印で表しています(これはりんご365個分よりも若干長くなっています)。
まず仮のスタート地点としてある年の春分点(春分になる時刻)が3月21日の0時ぴったり(上図の左端)だとすると、1年経つと「真の1年」と「暦の1年」の差(約6時間分)だけ春分点の時刻がずれます。つまり1年後の春分点は3月21日の5:49になる。これが積み重なっていくので、4年経つと約1日分ずれてしまい、春分点は3月21日の23:15になってしまうのです。
「いやまあ1日ぐらいずれたってさ、別にいいんじゃない?」と思うなかれ。《別にいいんじゃない精神》でこれをこのまま進めていくと、400年経つと大雑把に言って”100日”もズレちゃう訳ですよ。これどういう事かって言うと、「もうすぐ桜が咲きそうだなー」という季節に暦を見ると7月頭ごろ、みたいな事になっちゃうってことです。500年ぐらい経つと、「最高気温は35℃を超える猛暑日です」なんてタイミングで暦ではクリスマスが来たりする訳です。
このズレを解消するために、みなさんご存知うるう年(閏年)がある訳ですね。
ご存知の通りうるう年には1日追加されるので、1年が366日になります。さきほど言った通り、4年で約1日のズレが生じていますから、暦に追加の1日が入ることでズレが解消される訳です。
では、うるう年を導入した場合の春分点がどうなるかを考えてみよう。4年後の春分点は、うるう年がなければ3月21日の23:15な訳ですが、暦が1日増えたことで日付的には1日前の日に動き、3月20日の23:15になります。これで4年間積み上げてきたズレは、ほぼ解消されています(あとでまた話しますが、ほぼ解消されただけであって完全に解消されていないことを覚えておいてください)。
この4年に1回うるう年を作るシステム、いつ導入されたかというと、古代ローマ時代の紀元前45年にまで遡るのです。2000年以上前に365日と実際の1年の間のズレに気付いて4年に1回366日にしようって思いつくのすごくないですか?
誰やそんな天才は!?って思いますよね。
導入したのは、古代ローマの英雄ユリウス・カエサル(英語名:ジュリアス・シーザー)です。カエサルは古代ローマを代表する政治家かつ軍人です。「賽は投げられた」「ブルータスお前もか」「来た・見た・勝った」などのカエサルが残した言葉も有名。このカエサルの名を取って、4年に1回うるう年を入れる暦のことをユリウス暦と言います。
カエサルは非常に多才な人物で、軍事だけでなく文筆家としても高く評価されています。彼の人生に触れればきっと大きな刺激を受けることができると思いますので、興味のある方は彼の生涯を記した本を手に取ってみてはいかがでしょうか?
カエサルが導入したユリウス暦(4年に1回うるう年)ですが、さきほどもチラッと言ったように完璧ではありません。つまり1年ごとに春分点となる時刻が後ろに動いていくのですが、うるう年で1日追加されることによって春分点となる時刻が今度は前に動いてしまうのです。その差は約45分。
上図のように、最初春分点の時刻が3月21日0時ぴったりだったものが、4年経ってうるう年が入ると、3月20日の23:15に動くので、うるう年を導入しても4年で約45分ずつズレていく訳です。どれくらいズレるかと言うと、例えばユリウス歴を2000年続けていくと、ズレは約15日になってしまいます。
という訳で、ユリウス暦のように4年に1回うるう年を入れても少しずつズレが溜まっていきます。そこで、さらなる修正が必要になりました。それが現在私たちが使っているグレゴリオ暦です。
ユリウス暦では4年に1回、なので400年に100回うるう年が来ますが、これだと1年ごとに積み上がるズレを修正し過ぎてしまうので、グレゴリオ暦ではうるう年の回数を減らしました。
その回数は、400年で97回です。そのためのルールは以下の通り。
- 4の倍数の年はうるう年
- ただし100の倍数の年はうるう年じゃない
- ただし400の倍数の年はうるう年
最近で言うと、1700年、1800年、1900年はうるう年じゃないけど、2000年はうるう年で、その他の4の倍数の年は全部うるう年。なので、1601年から2000年までの400年間の間でうるう年は97回となる訳です。
これで400年ベースで見ると、ほとんどズレはなくなりました(もちろん1年で見ると約6時間のズレがあります)。
どうして節分は動いちゃうのか?
さて、ようやく節分の話に入りたいのですが、節分ってそもそもどう定義されるのでしょうか?節分がどうやって決まるのか理解するには、二十四節気というものを知る必要があります。
二十四節気というのは1年を24等分したもので、それぞれの節目に季節に合った名前が付いています。春分・夏至・秋分・冬至もその1つですね。そして立春・立夏・立秋・立冬もよく耳にすると思いますが、これらはそれぞれ春分・夏至・秋分・冬至の中間地点を表しています。
で、現代の節分とはつまり立春の前日のことを言うんですね。
上で説明したように、春分点(ぴったり春分になる時刻)が年を追うごとにズレていきますよね。二十四節気は春分点を基準にして何月何日の何時何分と決まりますから、立春となる時刻も春分点と同じように少しずつ動いていきます。てことは・・節分も立春と一緒に動くってことですね。
では、ここ数十年の立春となった時刻の変化を見て、立春および節分がどう動いてきたか&今後どう動いていくかを考えてみましょう。
このグラフは、立春となる時刻が年を追うごとにどう動いていくかを示しています。1年経つごとに立春となる時刻は約6時間ずつ後ろにズレていきます。そして4年経つと、このズレをうるう年で巻き戻しますので今度は前に動くのですが、少し巻き戻しすぎるので、4年前と比べて少しだけ前にズレます。この4年周期の動きをずっと繰り返していくのです(400の倍数以外の100の倍数の年はうるう年が入らないので、そこの前後だけ8年間後ろにズレ続けます)。
さて細かく立春の動きを見ると、ここ40年近くは2月4日の中に収まっていたんですが、今年2021年は124年振りに立春が2月3日になったのです。しかもギリギリ2月3日の23:59です。これに伴い、節分は立春の前日なので2月2日になった訳ですね。
さあ冒頭の質問に戻りましょう。次に節分が2月2日になるのは、何年後でしょうか?
答えは4年後の2025年です。
来年(2022年)はまた約6時間後ろにズレるので立春は2月4日、節分は2月3日に戻りますが、その後2024年のうるう年を経て2025年にはまた1日分前にズレてくるので再び立春は2月3日、節分は2月2日になります。
グラフを見てもわかるように、当面は4年に1回節分が2月2日になる年がやってくる訳ですね。
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
暦の成り立ちには、太陽を回る地球の動きが密接に関係していたんですね。知っている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、意外と知らない人も多いですよね。
普段宇宙のことなんか気にしていないという人も、これを機に少しだけ宇宙に想いを馳せてみるのもいいかもしれません。