前の記事でSFD・BMDの意義そして具体的な描き方を解説してきた。
今回の記事では、SFD・BMDの大事な特徴と、材料に加えられる負荷の種類に応じてSFD・BMD上に現れる4つのパターンについて説明したい。
この記事に書いてあることを知ればSFD・BMDのことをより深く理解できる。計算をしなくてもある程度グラフの形を描けるようになったりもする。計算間違いに気付くきっかけになることもある。とっても便利なので、ぜひ最後まで読んでほしい。
SFD・BMDの意義についておさらいしたい人は、これを読んでから戻ってきてほしい。
材料力学 SFD/BMDって何?その意義を超詳しく解説【材力Vol. 6-1】
具体的な描き方について知りたい人は、この記事を読んでからまた来てほしい。
材料力学 絶対描けるようになるSFD/BMDの描き方を徹底解説【材力Vol. 6-2】
いろんな問題の解き方のパターンを見たい人は下の記事をどうぞ。
材料力学 6つの具体例から学ぶSFD・BMDの重要ポイント【材力Vol. 6-4】
- 超基本的な性質:「BMDの傾きが同じ位置のSFDのFの値になる」
- 何も負荷を受けていないところ:SFDは一定値(水平)、BMDは傾きFの直線
- 集中荷重Pが働く点の前後:SFDは大きさPの段、BMDは傾きがPだけ急変するような角
- モーメントM0が働く点の前後:SFDは一定値(水平)、BMDは大きさM0の段
- 分布荷重(密度q)が働く領域:SFDは傾き”-q”の直線、BMDは二次関数
Contents
超基本的な性質
まず、特定パターンの説明をする前に、SFD・BMDの超基本的な性質について紹介しよう。
絶対に分かっておくべきSFD・BMDの基本的な性質は以下の通り。
これはどういうことかと言うと、ある位置においてBMDのグラフの傾きが同じ位置のSFDのFの値になる、ということだ。
これを理論的に証明することもできなくはないが、あまり興味がある人も多くないだろうから省略する。とにかく『BMDの傾き=SFDの値』ということを覚えておこう。
では、具体的なパターンを見ながらこの性質がどんな風に現れるか確認していこう。
材料が受ける負荷の状況とSFD・BMDに現れるパターン
では、超基本的な性質が分かったところで、はりが受ける負荷の種類に応じてSFD・BMD上にどんな変化が現れるか具体的なパターンを見ていこう。
これを全部理解できれば、計算せずともおおよそのグラフの形が分かるようになるだろう。また、自分の解答が正しいかどうかを簡単にチェックするときにも便利なので、ぜひ理解してほしい。
まずは何の負荷も受けていない所で、SFD・BMDがどんな形になるか見てみよう。ほとんどの問題ではりの大部分はこれ(何も負荷がかかっていないところ)なので、SFD・BMDの大部分も下の絵に描いたような形になる。
SFDについては変化なしで、グラフ上では ”水平” になる。値自体(上の図ではF1)はどうなるか分からない。このはりのどこかに作用している外力や支持条件によって決まる。だけどとにかく形は水平だ。何かしらの値で一定値となる訳だ。
BMDについては基本の性質を思い出そう。”BMDのグラフの傾きが同じ位置のFの値になる”が絶対ゆずれない性質だ。てことは、SFDがある値(上図ではF1)で一定ということは、BMDは傾きF1の直線(一次関数)となる。
では次に集中荷重が働くときを考えよう。
集中荷重が図のように上から下向きに作用するところでは、その前後のSFD・BMDは下のようになる。
まず、SFDは集中荷重が働くその点でガクッと ”段” が付く。その段の大きさは、そこに加わってる外力の大きさと同じだ。上図のSFD内のF左やF右は、その他の外力や支点の状況によって決まる。
BMDについては、やはりBMDとSFDの関係性から上図のようになる。つまり、集中荷重が働く点の前後でSFDのFの値が急変する(Pだけ段が付く)ということは、BMDのグラフの傾きが急変することを意味する。集中荷重が作用する点の左側では傾き:F左、右側では傾き:F右となるので、BMDグラフ上では ”角” となって現れる。
次は外力としてモーメントが働くときの場合だ。
SFDは変化なしだ。何も負荷を受けていないときと同じで、ある値で ”水平”(一定値)となる。
この一定値(上図ではF1)は、やはり外力や支持条件によって決まる。
ではBMDはどうか?SFDが何も負荷を受けていないときと同じ形(一定値)となるので、BMDも同様に傾き一定のグラフとなる。何も負荷を受けていない場合と違うのは、集中モーメントが働いている分だけその点でガクッと ”段” が付くことだ。さきほどの集中荷重の場合では、SFDの方に荷重の大きさの分だけ ”段” が付いたが、今回はBMDの方にモーメントの大きさの分だけ ”段” が付くことになる。その前後でのBMDの傾きは変化しない(上図ではF1で一定)。
最後に密度qの分布荷重が作用する場合を考えよう。完成するSFD・BMDの形としては、これが一番複雑となる。
SFDでは、分布荷重が働いている領域全域で傾き”-q”の直線になる(他の外力がないとき)。今回も他の場合と同様に、この直線の縦軸方向の位置はその他の外力や支持条件によって決まる。
BMDの方は、SFDが連続的に変化していくのでこれを反映して、二次関数となる。二次関数を描くときの注意点は、ちゃんとSFDのFの値とBMDの傾きが連動するように描かないといけないことだ。
例えば、SFDのグラフでFの値が正(+)の領域では、BMDは傾きが正であり、Mの値は増えていかないといけない。さらに、SFDのFの値が0に近づいてくるときはBMDの傾きもだんだん0に近づかないといけないし、SFDが0になる点ではBMDは傾きが0、つまり極値をとるように描かないといけない。上図をよく見て、SFDとBMDの対応関係がどういう風に現れているかよく確認しておいてほしい。
まとめ
材料に加えられる負荷の種類に応じて、SFD・BMDにどんなパターン(グラフの形の変化)が現れるかを解説してきた。この4パターンを理解すれば、どんな問題でもおおよその形は計算せずとも分かるようになると思う。
実際には、もっと複雑な負荷がかかる問題を扱うこともあるかもしれないが、すべてここで紹介したパターンの組み合わせで対応できるはずだ。
ぜひ今回説明した内容をよく理解して、SFD・BMDを素早く正確に描けるようになってほしい。
次の記事で色々な具体例を説明するので、具体例を通してさらにSFD・BMDに現れる特徴を実感してほしい。
材料力学 6つの具体例から学ぶSFD・BMDの重要ポイント【材力Vol. 6-4】
- 超基本的な性質:「BMDの傾きが同じ位置のSFDのFの値になる」
- 何も負荷を受けていないところ:SFDは一定値(水平)、BMDは傾きFの直線
- 集中荷重Pが働く点の前後:SFDは大きさPの段、BMDは傾きがPだけ急変するような角
- モーメントM0が働く点の前後:SFDは一定値(水平)、BMDは大きさM0の段
- 分布荷重(密度q)が働く領域:SFDは傾き”-q”の直線、BMDは二次関数