大学院進学 研究室選びで注意すべきチェックポイント3つ

多くの大学では、4年生になるタイミングで研究室(文系だとゼミ?)に配属されると思います。大学院に進学する人であれば、3年間というそれなりに長い年月をこの研究室を中心にして過ごすことになります。どうせなら楽しく有意義な時間にしたいですよね。

この記事では、研究室を選ぶときにチェックすべきポイントについてまとめましたので、学生のみなさんぜひご一読ください。

こんな人にオススメ

  • 自分のためになる研究室を選びたいけど、何を見て判断すればいいの?って人


【結論】チェックすべき3つのこと

まず結論としては、以下の3つのことをチェックできたら良いと思います。

  • 人・環境 → 研究室見学に行き、大学院生の学生とぶっちゃけトークしよう
  • 活動量 → 研究室HPや学内報、大学HPの研究者情報をチェックしよう
  • 研究テーマ → 研究室HPを見て、気になることは見学に言って質問しよう

細部までチェックするためにはヤル気と図太さが必要ですし、すべてを満たすような好条件の研究室はなかなか見つからないでしょう。しかし、中には簡単に調べられることもありますので、できる範囲でチェックして、選ぶときの材料にしてもらえばと思います。

では一つずつ具体的にどんなことをチェックすれば良いか、見てきましょう。

【その前に】果たして進学が必要か?

大学院進学する前提で話をしていますが、ちょっとここで立ち止まって考えてみましょう。果たして、本当に大学院に進学することが良い選択でしょうか?

周りがみんな進学するから自分も進学しようとしていませんか?(地方私大とかだと逆に「みんなが就職するから進学という選択を頭から消してませんか?」という問いもあり得ます)

就活が面倒になって大学院進学を選んでいませんか?

進学することで支払うコストとあなたが得るベネフィットをしっかりと再認識しましょう。一度こういうことを考えておくと、研究室選択の際に何をチェックすべきかということも明確になってくると思います。

払うべきコストはこんなことがあります。

  • 学費や奨学金という負債、就職すれば得られるはずの2年分の収入
  • 2年間という貴重な時間
  • (就職した同級生が)業務の中で得るスキル・経験

逆に得られるかもしれないベネフィットはこんな感じでしょうか。

  • より高位な学位
  • より専門的な知識・研究スキル
  • 学会発表等を通じてグローバルな場で議論する経験
  • 就職の先延ばし(修士卒を中心に採用するような企業への就職機会)

まあ、コストの中の金銭的なもの(リストの1つ目)は完全にコストですが、残り2つは就職を選んでも出てくるものですね。就職した人だって同じように時間は流れていくし、就職を選んでいたら大学院での経験を得る機会が無くなる訳ですから。

だから、大事なことはコストに見合う、もしくはそれ以上のベネフィットを得るようにすることです。就職した同級生が同じ2年間という時間の中で得た経験・その成長よりも、進学したあなたは大きな、実りある経験・スキルを得ることを目指すべきです。

でないと、進学する意味ありませんよね?そうじゃなければとっとと就職してしまった方がいいと思います。

どうでしょうか?これを踏まえて、やっぱり進学したいと決意できましたか?決意ができたら、しっかり自分のためになる研究室を選びたいという気持ちが大きくなりましたよね。

では気持ちの準備ができたところで、ようやく具体的にどんなことをチェックすべきか見ていきましょう。

人・環境をチェック!

まずは何と言ってもこれです!良好な人間関係を築けなければ、どんなに魅力的な研究内容だとしても大きな成長につながることはないでしょう。

いや、この言い方には少し語弊があるかもしれません。もしあなたが強靭なメンタルの持ち主で、自分一人でゴリゴリ研究を進めていけるパワフルな人間であれば、素晴らしい研究内容とそれを推進できる設備があれば充実した2年間になるかもしれません。

しかし、多くの人にとって、(仕事もプライベートも含めたすべての)周りの人間との関係性は質の高い仕事・人生のための土壌です(僕は社会人になってこのことが身に染みました)。つまり、人間関係はモチベーションに直結します。それに、単純に研究室内メンバーの仲が悪くてギスギスしてる、なんて所に入りたくないですよね。

と言っても、人間性なんて簡単に測れるものではないし、上司とか先輩とかは、まあ正直ガチャみたいなもんです。なので、良い人を探すというより、これはあまりにひどいという人や環境を選択肢から除くような意味で、人間関係や環境をチェックしてもらえれば良いかなと思います。具体的には以下のような事をチェックしてみましょう。

担当教授の能力・人柄・指導姿勢・卒論修論への関連度

まずはこれです。研究室トップの能力や姿勢は、その研究室での研究の進めやすさ・過ごしやすさに大きく影響します。しかし、学生にとって教授の能力を見極めることはほぼ不可能でしょう。まあ教授になっている時点でそこまで無能な人間ではないでしょうから、この点に関してはあまり拘らなくてもいいかもしれません。

教授の活動実績(大学HPからチェックできるはず)から、有名雑誌への論文投稿実績・企業との共同研究実績・学会での役職(日本〇〇学会会長とか支部長とか)・国家プロジェクトの獲得実績・・などなどを見ればある程度わかるかもしれませんが、これを信じすぎるのも良くないかもしれません。中には大した規模じゃない学会や、順番が回って来れば誰でもなれるような役職もありますから。

なので、能力なんかよりも指導姿勢の方を重点的に見ましょう。これは普段の講義の中でも垣間見えるはずです。学生からの質問や相談に真摯に対応しているか?講義の方法や資料等が”やっつけ”ではないか?また、理工系の学科であれば、実験実習系の講義は教授の人柄に触れることができる絶好の機会です。ぜひ実験内容について質問してみてください。

あと、教授の研究者としての能力が高く、活躍しすぎてるためほとんど学生の面倒を見ていないなんてこともあります。出張に行ってばっかりだとか。それでも少ない機会で、的確な指摘を入れてくれるような本当に優れた研究者であれば全然問題ないのですが、中には卒論・修論に関知する気なんかサラサラなくて頓珍漢な口出しばっかりしてくる、みたいな先生もいるようです。(これが即悪いケースという訳ではありません。教授の代わりに優秀な助教やドクターの先輩が尊敬できる手本となることだってある訳ですし)

その辺りの実情は外見では分からないので、研究室見学をして内情を聞きたいところですね。とは言ってもこんな事正面切って聞けないので、大学院生にぶっちゃけトークしてもらうのがベストですね。

直接指導する人は誰か・その人の人柄

上の話とも関係しますが、卒論・修論の研究を直接的に誰が指導するのか?これもできれば確認しておきたいですね。研究を統括するのは教授や准教授だとしても、直接的に現場で学生の面倒を見るのは助教や助手ということもあります。

できればそう言った人たちとも直接話をしてみるのがいいでしょう。また、実習系の講義のときには、助教・助手の先生と接する機会も多いはずです。

研究室の雰囲気・学生部屋の設備や居心地

研究室の雰囲気を感じるためには、研究室見学の際の学生同士のやり取りを観察したりするのがいいかもしれません。場合によっては研究室内に思い出写真のようなものがあったり……。もし研究室がSNSを運用していれば、TwitterやInstagramから普段の様子を見ることができるかもしれません。

また学生のための部屋の居心地も良いにこしたことはありません。清潔さやPC・デスク・椅子の充実度、あとは冷蔵庫やコーヒーメーカーとかそういうプラスαも充実してれば言うことありません。しかし、これは研究室を変えたからと言って劇的に良くなるようなものではないでしょう。あまりにもひどい、自分が長時間居たくないような空間であれば避ける、ぐらいの気持ちでいいと思います。

研究室見学に行こう

上で述べてきた内容はなかなか外見では分からないものです。できれば、研究室見学にいき、色々な人と直接話をしてみましょう。その時、気さくな大学院生の先輩を見つけて、良い点も悪い点も洗いざらい話してもらうことができればベストです。

見学に行くのはハードルが高いように感じるかもしれませんが、基本的に学生が見学に来てくれることは嬉しいことです。「ヤル気のある学生が入ってきてくれるかも」という気持ちになることはあっても「めんどくせぇなー」となることはありません。逆に見学のお願いをして、雑な扱いを受けるようならそういう研究室だということかもしれません。(もちろんアポ取りの際には、最低限の礼儀・マナーを欠くことのないようにしましょう。)

活動量をチェック!

(学生の)研究活動実績をチェック

これが一番重要でしょう。先輩たちがやってきたような活動を自分も同じようにする可能性が高い訳です。見るべきは、学会発表や論文投稿の頻度とその内容ですね。

研究室によって学生に対する方針はそれぞれで、3年間で一度も学会に参加しなくてもいいとする研究室もあれば、国際会議に数回参加させる方針の研究室もあります。こういう学生の研究活動状況をチェックするためには、研究室HPをチェックしたり、大学によっては学内でそういう研究活動の概要をまとめたものを発行していることもあるので、そういったものを学部事務室等で問い合わせて見せてもらうのも手かと思います。

あとは、学生による論文の投稿実績があるか、とかですね。論文投稿はかなりハードルが高いので、誰でもできる訳ではないでしょうが、研究成果がうまく出た場合はぜひチャレンジして欲しいですね。

あと少し違う視点としては、先輩学生が発表している論文や学会発表の共著者の中に、企業の人の名前があるか?海外の大学の研究者の名前があるか?といったことを見てみるのも面白いかもしれません。こういう人たちの名前があれば、企業との共同研究や、海外大学との共同研究に学生が携わる機会があることを示しています。

以上のようなことを見れば、その研究室の学生の研究活動の色が見えるはずですので、自分がやりたい活動をできそうな所を探すと良いでしょう。

RAなどバイト代の有無や奨学金返還免除制度の利用実績

大学院に進学するということは、お金の心配も当然出てきますよね。学費の支払いもあるし、2年間まともな給料はもらえない訳ですから。研究室によってはRA(リサーチアシスタント)のような給料をもらいながら研究できることもあります。また、上で書いたような研究活動実績が優秀だと認められれば奨学金返還免除制度を利用できる可能性があります。成果数が多いほど、返還免除となる可能性が高くなります。

(※ここで言う奨学金とは、日本学生支援機構の奨学金のことを指します。返還免除制度の有無や細かい仕組みは大学により異なる可能性がありますので、詳細は在籍する大学当局に問い合わせてください。)

まあ「お金がもらえるからこのテーマにする!」というのは、ちょっとどうかなとは思いますが、お金の心配を解消できるに越したことはないでしょう。これに関しても資料として見るのは難しいでしょうから、指導教員や先輩の大学院生にこれまでの実績やその難易度など聞いてみるのがいいでしょう。

研究テーマをチェック!

研究テーマが一番大事なような気もしますよね。しかし個人的には、修士までの研究でテーマに拘る必要はないように思います。

将来研究職に就きたい人や、明確に就職したい分野が固まってる人は研究分野を絞って研究室を探すのも大事でしょうが、それ以外の人はそこまで拘る必要はないでしょう。「何を研究するか?」よりも、上で書いてきたような「どんな経験が積めるか?」「どんな人にどんな教えを受けられるか?」の方が重要だと思います。

就職してからは修士の頃の研究テーマがそのまま仕事になる訳ではありません。どんな研究も前向きに取り組めば楽しいはずですし、与えられた問題をいかに自分事として捉え、楽しむことができるか、というのも重要なスキルだと思います。

という訳で、研究テーマについてはサラッと研究室HPなどを見て確認する程度でいいでしょう。気になるものがあれば、そこの先生に詳しい話を聞きに行ってもいいでしょう。

まとめ

いかがでしょうか。なんだか大変そうだな、と思ったかもしれません。しかし、何にも分からない状態よりも「こういう所を見れば研究室のこういう一面が見えるんだな」というのが少しは見えてきたと思います。

最初に書いたように、全てをしっかりチェックしようと思ったら大変ですし、全部の条件を兼ね備えたような研究室を見つけることはほぼ不可能でしょう。上で挙げたチェックポイントの中で、自分が重要だと思うところを重点的に調べてみてください。

結局は見学に行くのが一番です。遠慮せずにどんどん研究室を訪問してみてください。

最後に、これを読んでくれた皆さんが充実した大学院生活を送れることを祈っています。

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